〜〜〜アイ〜ン劇場〜〜〜
「サイドストーリー」

1

 今日は高木にとっては最悪、そして、カレにとっては最高の1日であった。
今まで体調が悪くても、弱音を吐くことなどなかったカレが、朝から胃の調子が悪いと何度も口にしていたのには理由があった。
カレは、カレが残す弁当を狙って、高木が楽屋に来るはずだと考えていた。


 その日も無事に舞台が終わり、高木は、舞台のそででいつものように深い眠りについていた。スタッフたちがテキパキ舞台を片付けはじめた。大道具を運ぶ時に高木が寝ている睡眠ポイントは邪魔なので揺さぶり起こしたが、2,3m歩いてまた眠ってしまった。その睡眠ポイントも邪魔で仕方ないので、スタッフはいつものように、
 「高木さん!楽屋にお弁当用意してあるんで、そちらのほうで・・・。ここ片付けるんで・・・。」
 といい、しばらく待つと高木はムクリと立ち上がり、ようやく楽屋のほうへ歩いていった。
なんだよ〜というようなふてくされた顔で起こしたスタッフを睨み付けたが、スタッフのほうは、元からこんな顔なのだと思っていたため、知らん顔だった。不思議とスタッフ間での高木の印象は悪いものではなかった。特に害はないので不満の声も全くと言っていいほどなかったのである。
 高木の性格の悪さは一部の人間しか知らない。
 高木はプロデューサーに「あの男はクビにしろ!」と毎回言うほどの短気であった。
あの男をクビにしないなら舞台にはあがらないぞ!」とわがままをいい、クビになったスタッフも数人いた。しかし、プロデューサーの弱みを握っている高木は自分のせいではなくプロデューサーのせいにしてクビになったスタッフを憐れむフリをするのだった。プロデューサーの評判はとても悪かった。
 しぶしぶ楽屋に行くと、そこにはいつものように弁当とお茶とプリンが用意してあった。
 プリンは高木のわがままである。
 他のメンバーにはない。
 「長介もたまには焼肉ぐらいつれてけよっ」
 そう小さく愚痴り、ゴミ箱を蹴ったが、ついさっきスリッパを脱いだのを忘れていたため自分の足のほうが打撃を食らったようで余計に腹が立った。そのとき、何かとても大事なことを忘れているような気持ちになり動きが止まった。
さて、何を思い出せないのか・・・。
そのまま眠りに入りそうになりハッとして、とりあえず弁当を食べることにした。今日は高木の好きなエビフライが入っていた。好きな食べ物は最後にとっておくタイプなので、エビフライはさびしく弁当の端に寄せられていた。鼻歌まじりに食べる。
すさましい勢いで食べ終わると、さっきから気になっていることを必死に思い出そうとした。が、満腹感と程よい空調のおかげでいつものように眠りに入った。


(コンコン)
 「失礼します。いかりやさんどこにいるか知りませんかね〜?」


 そのスタッフのおかげでドキリとし、椅子から落ちそうになって飛び起きた。プッと噴出すスタッフに高木は頭にきたので、ただ返事もせず首を振った。


 “そうだ!長介のヤツ、胃が痛いとかいってたな。じゃあ、弁当くえねぇな。貰ってくるか


胸のつかえが取れたかのようにスッキリした顔で楽屋を後にした。やはり鼻歌交じりに。





おおわり




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